品川プリンスホテルに導入されたデリバリーロボットの真価は?

日本でも続々と導入が進められているロボット。接客や介護など、人にかかわる仕事においても続々と対応が始まっており注目を集めています。

なかでも2017年10月、いち早く導入を開始した品川プリンスホテル Nタワーのデリバリーロボットの事例を今回は詳しく紹介していきましょう。

ロボット導入の背景は?

ロボットが導入されているホテルと言えばハウステンボスの「変なホテル」が有名ですが、「品プリ」の愛称でも知られる一流ホテル、品川プリンスホテルにも一部導入されています。

しかし、一流ホテルといえばスタッフの丁寧な接客、ホスピタリティなど、人と人とのやり取りやコミュニケーションを重視するものと考えられがちです。なぜ一流ホテルがロボットを導入することになったのでしょうか。

そもそも今回のデリバリーロボット導入は、品川プリンスホテルが計画している新ブランド「Prince Smart Inn」のために運用ノウハウの蓄積を図ることも大きな目的としています。Prince Smart Innとは、2020年に開業予定の株式会社プリンスホテルの新ブランド。「スマート」という名のとおり、AIやITC技術を積極的に活用したホテルブランドです。

Prince Smart Innは次世代型の宿泊特化型ホテルをうたっており、20~30代のビジネスマンやレジャー利用者を客層のターゲットとしています。ホテルの顧客層やランクによってブランドを明確に分け、サービスの中身を差別化していく取組みの一貫として誕生します。

高級でラグジュアリーなサービスが期待される高額なホテルは専門教育を受けた経験豊富なホテルスタッフが接客を行い、低価格が重視されるビジネスホテルはロボット導入で人件費を削減し、低価格化を実現する、そのようにホテルも二極化していくのではないでしょうか。

デリバリーロボット「Relay(リレイ)」

品川プリンスホテルへ導入されているのはRelayという自律走行型のロボットです。ちなみに、Relayというのはロボットの正式名称ですが、品川プリンスホテルでは独自に「HARRY」という愛称をつけて運用しているようです。

このロボットはシリコンバレーを拠点とするロボットベンチャーSavioke社が開発ならびに製造を行っています。

こちらがSavioke社による紹介画像です。

安全性の面を考慮すると、実際に常にこのスピードで運用されているとはいえませんが、非常にスムーズで素早い動きであることが分かります。

Relayは自分でエレベーターに乗ることができ、障害物を避けて自動走行しながら客室の前まで自分で行くことができます。

ホテルスタッフは客室からのオーダーを受けてRelayに物品をセットし、ロビーを出発させるだけで、あとはRelayが自分で客室まで届けに行ってくれるという仕組み。

客室の前に到着するとRelayは電話をかけて到着を知らせ、お客は自分でRelayから品物を取り出すという流れです。

現時点で品川プリンスホテルが提供しているデリバリーサービスとしては、フェイスタオル、歯ブラシ、LANケーブル、ワインオープナー、ソフトドリンクやスナック類など。

Relayの収納スペースは26cm×22cm、深さ37cmという大きさなので、そこに収納できるサイズのものがメインになっているようです。

小物類であれば宿泊客が取り出しやすいように、トレイを置くことによって深さを浅く調節できるようです。

連続走行時間は約4時間ですが、Relayはロビーに戻ると自動充電されるということですから、一切の行動に無駄のない仕事をしてくれそうです。

実際にホテルに導入する段階においては、あらかじめホテルのマップ情報をRelayに学習させる必要があるとのこと。ホテルの場合、フロアによって客室の配置が大きく変わることもないと想定されるため、1フロア分のマップ情報を複数階分に応用することもできそうです。

ロボットの接客は味気ない?

Relayはヒューマノイド型のロボットではないため、自走するとはいえ手足や顔があるわけではありません。味気ないと言えば味気ないのですが、自律走行型のロボットというのは何度も目にしていると自然と愛着が湧いてくるのです。

たとえばロボット掃除機のルンバがわかりやすい例といえるのではないでしょうか。いつでも、どんなときも文句を言わずあちこち動き回って掃除している姿を見ると、どこかペットにも似たような温かい感情を抱くことがあります。

相手は感情を持たないロボットなのですが、人間の方が勝手に意味づけをするということなのでしょう。

Relayが人に愛されるロボットになるかどうかはわかりませんが、ビジネスホテル内であれば誰かにいたずらをされるようなリスクもそれほど高くはないと思います。

ロボットの接客によって喜ぶ人もいる

ホテルという空間はある意味特殊な場所といえます。不特定多数の人間が建物の中にいるはずなのに、それぞれの部屋の中は完全にプライバシーが保たれています。いわば第二の自宅ともいえる場所でもあります。

しかし、そんなプライベートな空間に、ホテルの客室係とはいえ第三者が入ってくるのは気が引けるものです。たとえば、朝起きたときに歯ブラシやタオルといったアメニティがないとき。お風呂に入る前なので髪はボサボサ、浮腫んでいる状態の顔のまま人に会いたくないと思う人は多いでしょう。

また、チェックインやチェックアウトで忙しい時間帯にルームサービスを頼むのが気が引けてしまうという人もいるかもしれません。

しかし、デリバリー用のロボットが導入されているホテルであれば、人の目を気にしたり人の手を煩わせたりするといったことを一切気にする必要もなく、必要なものを必要なときに気兼ねなくオーダーすることができます。

「ロボットの接客=心がこもっていない」を感じてしまう人もいるかもしれませんが、ロボットだからこそ気を遣う必要がないと考える人がいることもまた確かです。

日本では客室係にチップを渡す文化はありませんが、海外においてはロボットにチップを渡す必要もないため、経済的な理由でロボットの接客を歓迎する声も出てきそうです。

ホテルに普及が期待されるロボット

品川プリンスホテルNタワーに導入されたRelayは1台のみということでしたが、今後ますますロボットによる接客は拡がりを見せていくものと考えられます。Nタワーはビジネスホテルといっても内装はお洒落なカフェのような空間になっており、特に若い世代のビジネスマンや観光客がメインの客層となっています。

流行や新しいものに敏感な客層が多い品川プリンスホテルNタワーだからこそ、Relayの導入はうまくいったといえるかもしれません。

今後、同様の取り組みを行うホテルが増えていけば、ホテル業界全体が従来の形態から変貌を遂げる日がやってくるかもしれません。まさに近未来的な取り組みといえるでしょう。

もともとRelayの自律走行の性能は非常に高く評価されており、実際のホテル業務のなかでも事故やトラブルは起こっていないようですが、今後本格的にロボットが普及していくためには、十分な安全対策が必要不可欠であることは当然のことです。

池に身投げしてしまった警備ロボットのようにならないよう、安全に職務をまっとうできる環境作りが求められるでしょう。

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